voices of cats 猫の声

神奈川県の愛川町に外猫のための診療所を始めました。

避妊手術:術後の注意

 外猫の避妊手術では、傷を舐めさせないためのエリザベスカラーを付けることが出来ません。ですから猫が傷口を舐めても開かないように注意し傷を縫い合わせなければなりません。縫い方に皮内縫合というものがあり、縫い糸を皮膚の内側に収めてしまう方法です。当診療所では、この縫い方を実施した後、通常の縫合(多くの方がイメージするような)を追加して終了とします。外猫の多くは抜糸のために再度来院することがないので、糸が勝手に取れてしまう吸収糸を用います。時間の経過により引っ張り強度が弱まり、縫合糸は外れて取れてしまいます。ただ外側の糸を早々に自分で引っ張ってとってしまう子もいます。このため皮内縫合がより重要になります。さて、今回引き取ったサビ猫ちゃんは4日目までに5針縫った糸の4本を自力で取ってしまい(経験上、食べることはほとんどないようです)、残り1本の周囲をペロペロ舐めていたので、気になっていると判断し、こちらで抜糸しました。舐めたことが良くなかったみたいで傷がわずかに開いたため(筋肉の内側に内蔵があり、その外側に皮膚があり、それゆえ内蔵が見えているわけではありません)、エリザベスウェアを着てもらい、その間抗生剤の軟膏とガーゼで傷が治るよう処置しました。

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術後5日目

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術後6日目エリザベスウェアーを着てます

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術後9日目エリザベスウェアーは良くできています

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術後10日目傷口の一部がわずかに開いています

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術後11日目ほとんど気にならなくなりました

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術後14日目傷口は完全にふさがりました

 全ての猫でこのような事が生じるわけではないのですが、多くの外猫は人に慣れているわけではないので、一般に傷口を見ることが難しいようです。術後の経過は、元に戻ってきてご飯をしっかり食べてくれているかが判断材料になります。手術後戻る戻らないの話しは別な機会に譲りますが、外猫の避妊手術には獣医師だけでなく、依頼主様の協力があって成り立つと考えております。