voices of cats 猫の声

神奈川県の愛川町に外猫のための診療所を始めました。

雌猫の妊娠回数に関して

長い間環境省と議論してきましたが、当方の正当性を環境省が認めましたので、時間を追ってご説明します。
 
出来る限り憶測などを排除するため、具体的な内容は加工せずお伝えしたいと思います。
なお、公開されている情報はそのまま「切取り」で、メール等の文面は、以前のブログではそのまま切り抜きでお伝えしてきましたが、今回のブログでは、筆者の入力でお伝えします。
 

おおよその流れは以下の通りです。

  • (1)猫の飼い方・マナーにおける記載への質問
  • (2)環境省への質問と環境省からの回答
  • (3)環境省への再質問と環境省からの再回答
  • (4)VOC外猫診療所の提案
 
(1)愛川町ホームページにおける『猫の飼い方・マナー』猫の妊娠回数に関して質問しました。
 
環境課への質問(2023/4/?日付不明)
→ホームページで猫の妊娠回数に関して年に2〜4回と記載されていますが、根拠はあるのでしょうか。
環境課からの回答(2023/4/17)
今鉾 君雄様
平素よりお世話になっております。
ホームページのお問い合わせについて回答いたします。
猫の出産回数につきましては、環境省資料において1年に2~4回とされておりますことから、町ホームページにおいては、その資料を参考にしております。
また、1回あたりの出産頭数については町ホームページでは3~5頭としておりましたが、環境省資料に合わせ、4~8頭に修正いたします。
なお、猫の出産回数等についての科学的根拠につきましては環境省へお問い合わせ下さい。
この度は貴重なご意見をいただきありがとうございました。
【以下愛川町ホームページより】

                                【以上】
▲これより前では、年2〜4回、1回あたり3〜5頭 となっておりました。
 
この回答に対しての返信(2023/4/17)
→環境課ご担当者様
 ご連絡ありがとうございます。後ほど環境省に問合せします。
神奈川県動物愛護センターへの問合せでは、4回は無いとの回答を得ています。
環境省の回答結果がわかりましたら再度問合せさせていただきます。
 
今鉾君雄
 
(2)環境省への質問し、回答を得ました
 
環境省への質問(2023/4/17)
ご担当者様
 
内容 :パンフレット『ふやさないのも愛』3ページ目のNo.5 「猫は1回の出産で4〜8頭の子猫を産み、1年に2〜4回の出産が可能です。」のエビデンスを教えてください。
    特に年間4回出産できる状況が良くわかりません。よろしくお願いします。コールセンターには問合せ済です。
 
今鉾君雄
【以下環境省資料「ふやさないのも愛」より】

                               【以上】
 
環境省からの回答(2023/5/2)
→ 今鉾君雄 様
 
お問い合わせいただきありがとうございました。以下回答させていただきます。
年間4回出産できる状況につきまして、そういったケースが猫の繁殖サイクル上想定され得るとともに、実際に確認されていることを掲載の根拠としています。文末の参考資料をご参考にしていただけますと幸いです。
具体的には、出産後哺乳しなかった母猫においては、平均21.9日で次の交配が成立したという報告があります(※P85右列)。その報告を基に、妊娠期間を64.9日(※P85左列) と仮定し、実際に出産後哺乳しなかった母猫または人為的に離乳された母猫が、仮に21.9日後に交配・妊娠が成立すると、理論上年4回の出産が可能と考えられ、本パンフレットに掲載しています 。
参考情報ですが、年間4回出産した個体を確認しているとの自治体職員からの報告もあります。生まれたばかりの子猫を母猫から引き離し、保健所に持ち込む等し、残った母猫が程なく交配成立、再び妊娠出産というサイクルに入り、年間4回の出産が成立したとのことです。
 
※参考資料
信永利馬、岡本道生、高橋和明(1972)。小ケージ内におけるネコの繁殖成績
家畜繁殖誌 22巻3号
 
【以下資料】

                               【以上】

 
(3)環境省への再度質問し、再度回答を得ました
 
環境省への再質問(2023/5/10と6/5)
5月10日にお送りしました内容の再送です。よろしくお願いいたします。
 
回答ご担当者様
 
愛川町にありますVOC外猫診療所の獣医師の今鉾と申します。先日ご回答(2023年5月2日14:08)いただいた件で追加で幾つか質問させて下さい。
「小ケージ内で育成飼育したネコの繁殖成績(以下資料)」について、貴殿は出産後哺乳しなかった母体の次の交配日を平均21.9日、妊娠期間を64.9日と仮定して、理論上年4回の出産が可能としております。(21.9+64.9)×4=347.2<365というこですね。さて、この資料のP84左には「出産は年間を通じて見られ、総腹数84腹における月別出産状況をみると、とくに8月、11〜1月、5月に多かった」、「交配数には時期的に増減があり10〜12月、3〜6月に多くなる傾向が見られ、出産は5月、5月及び11〜1月が多くなっている。このことは日照時間が短縮する季節に発情個体が多くなることを実験的に証明したSCOTT & LLOYD-JACOB の報告と多少異なり、今後の検討に興味がもたれる。」とあり、1個体での出産回数は示されないものの、少なくとも実際出産するピークが2〜3であることが示されている。貴殿はこの資料をもって理論上年4回の出産が可能であるとの根拠にしてあり、こちらが指摘したパンフレットのエビデンスとしているが少々無理があるのではないでしょうか。加えて、この資料の目的が「日本のイエネコを実験動物化する目的で、1969年2月から小ケージ内繁殖を試みた」とあります。サマリーにも年間出産回数については言及されていません。ついでに、参考情報として、「年間4回出産した個体を確認しているとの自治体職員からの報告もあります。生まれたばかりの子猫を母猫から引き離し、保健所に持ち込む等し、残った母猫が程なく交配成立、再び妊娠出産というサイクルに入り,年間4回の出産が成立したとのことです。」を示しているが、同じ個体であるかの確認、そもそも無条件に引き取り避妊させない、等参考情報にはほど遠いものを提示されてもこまります。筆者の愛川町役場では専門職である獣医師はおりません。野良猫に関する町のホームページ上の情報は環境省の情報を写すのみです。いわゆる孫引きしかできません。再度ご説明いただくとありがたいです。
 
環境省からの回答(2023/7/11)
→今鉾 君雄 様
 
再度のお問い合わせをいただき、ありがとうございました。
また、回答にお時間を要しましたことお詫び申し上げます。
ご指摘をふまえ、実態に即した情報に修正することが適切と認識いたしました。
この度は貴重なご意見をいただきありがとうございました。    
 
(4)VOC外猫診療所の提案
 
愛川町環境課には環境省の回答は伝えてあります。
筆者の経験と多くの猫に係わる人の意見をまとめると、
 
猫の妊娠回数は、年1回〜2回、条件により3回もありうる。1回当たりの子猫数は1頭〜5頭、条件により6〜7頭もありうる。
 
です。愛川町環境課におかれましては、環境省の修正を待たずに変更を望みます。
 
[今鉾君雄より]
環境省の役人は分かっていませんね。どこからか化石のような資料を持ちだしてきて、「これが根拠(エビデンス)だ。」といっても令和5年の時代に通用しませんね。追試験するにしても、このような実験は、動物福祉の観点から認められるわけないでしょう。残念なことに全国の自治体でこの環境省の資料を参考に業務がなされているのですから困ったものです。7月23日現在、環境省の資料等は修正されておりませんので、来年度までに修正されていないようであれば再度問合せしたいと考えています。